中国 西安で伎楽

1993年3月、薬師寺の依頼で中国は西安で伎楽演奏を行いました。
薬師寺は、信者さんによる写経によって伽藍の整備を行ってきているが、この写されたお経を納める旅を行っていた。今春に、その納経のための旅行を計画されていて、この時に伎楽を演じて貰いたいという要請で、それならば第10回海外公演として、西安、北京、營口を回ることとなった。
以下は天理大学雅楽部の海外公演の報告から抜粋
第10回海外公演「雅楽の里帰り - 中国公演を終えて」

日本の優れた伝統芸能である雅楽の研究と演奏技術の習得、並びにその普及を目的として活動を進めている天理大学雅楽部は、雅楽の演奏による文化交流を通じて国際親善に寄与することを願って、海外における公演を行ってきた。
昭和50年(1975)を第1回として、これまで9回挙行している。平成4(2002)年に第9回目を、北米西海岸にて行ったところであるから、次回は平成7年という予定であった。とろが、突然降って湧いたように、中国公演の話を薬師寺より頂いた。
昭和55年(1980)、東大寺の昭和修理落慶法要の時、NHKと東大寺からの要請で、幻の天平芸能といわれていた伎楽の復元が企画されその演奏.-を私どもに依頼があって、つとめさせて頂いた。
その後、クラブとして約10年かけて文献に出てくる伎楽の演技の試作復元に取り組んできた。
そのような中、薬師寺でも伎楽をしたいとの話になり、独自の装束を製作した。折角であるからと、薬師寺独自の新伎楽を作製することになり、薬師寺ゆかりの玄奘三蔵の、インドヘの取経の旅を題材にしたものをということになった。
三蔵法師の取経といえば、孫悟空が活躍する『西遊記』がよく知られているが、玄奘三蔵自身が書いた『大唐西域記』があり、これを元に物語を作ることになった。
二年前に第一作が出来、玄奘三蔵には俳優の田村高広さんがなって、仮面を付けた学生との絡みで演じられた。
昨年は、山田吾一さんが玄奘の役で、第二作「高昌国の段」を演じた。
薬師寺は、信者さんによる写経によって伽藍の整備を行ってきているが、この写されたお経を納める旅を行っていた。今春に、その納経のための旅行を計画されていて、この時に伎楽を演じて貰いたいというのが、薬師寺の希望であった薬師寺からの要望は、3月15日に西安郊外にある興教寺における、臥仏の開眼法要における伎楽「金剛・力士」の演技、納経の旅参加者と、西安の市当局や仏教界の関係者を招待してのパーティにおける雅楽の演奏、そして翌16日、大慈恩寺における納経法要における伎楽「三蔵法師一高昌国の段」の奉納の三つであった。文化交流として西安音楽院での雅楽公演をセットして下さったが、これは学校同士の交流が適当とのことで、雅楽部主催となった。

中国行きの話が具体化するなかで、この機会に是非北京と營口で演奏ができないか、とのお話しを頂いた。相談の結果可能とわかり、早速準備に取りかかった。
結局、日程は3月13日から20日の8日間、公演地は西安、營口、北京の三箇所、公演は伎楽2回、雅楽4回の計6回となった。伎楽と雅楽の両方を演ずるため、現役部員の殆どが参加せねばならず総勢45名の大所帯である。経費は、往復の航空運賃と西安における一切を薬師寺が、北京と營口における一切を現地の団体が持って下さることになった。その他、国内における移動や、出発前の合宿を含めた経費は、クラブで持っことになった。
持参した曲は、先の伎楽の他に、雅楽として管絃「越殿楽」「陪櫨」、催馬楽「鈴之川」、舞楽「納曽利」「青海波」そして、お面をプレゼントするための「抜頭」である。これらの曲を、舞台によって組み合わせて演奏した。(S)
以下省略
